民法の相続法改正に伴って、大きくポイントになるところをみていきましょう。

まずこの配偶者居住権ですが、「その建物に住み続けられる権利」です。

相続が開始すると、相続財産は相続人に共有の状態で帰属します。

例えば、父が無くなり、母と子供が相続人で、子供が全財産を相続するような場合、子供は母親に建物を貸している(使用貸借関係)様な状態になります。

これでもし子供が建物を売ったりしてしまったら、母親は住むところが無くなってしまいますね。

簡単な例ですが、高齢社会の現代で、こういった不都合が起きないように、配偶者の居住権を確保しました。

ではその要件や効力をみていきましょう。

配偶者短期居住権

要件

被相続人の配偶者であること(但し、相続欠格事由に該当する場合等はダメ)

相続開始時に、被相続人が所有する建物に無償で居住していたこと

効力(存続期間)

配偶者が遺産分割に関与する場合、遺産分割により当該建物の帰属が確定した日、又は相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間

上記以外の場合、当該建物を譲り受けた者等から、配偶者短期居住権の消滅の申し入れを受けた日から6か月を経過するまでの間

効力(法律関係)

配偶者は無償で当該建物を使用することができます。

他の相続人は、第三者に譲渡するなどして、配偶者の居住権を妨げてはいけません(1037条2項)。

配偶者は善管注意義務を負い(1038条1項)、他のすべての相続人の承諾を得なければ、第三者に使用させることができません(1038条2項)。

配偶者居住権

上述の配偶者短期居住権と何が違うのかというと、こちらは終身の間居住権が認められ、また第三者に貸したりして収益をあげることもできる内容です(建物所有者の承諾は必要)。

また遺産分割の内容の一つとして、配偶者居住権を取得させたり、被相続人の遺贈等により配偶者居住権を取得させることもできます。

要件

相続開始時に、配偶者が当該建物に居住していたこと

当該建物が、被相続人の単独所有又は、配偶者との共有名義であったこと

当該建物について、配偶者居住権を取得させる旨、遺産分割、遺贈又は死因贈与がなされたこと

効力(存続期間)

原則終身の間ですが、遺産分割協議等で期間を定めることもできます。(1030条)

効力(法律関係)

配偶者は無償で当該建物の使用収益ができます。

配偶者居住権は譲渡はできません。(1032条2項)

居住建物所有者は、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。(1031条1項)

配偶者居住権に基づき、不法占拠者等に対して、返還請求することもできます。(1031条2項)

まとめ

まだ効力はあるのですが、配偶者居住権はかなり強い「物権」なのです。

最後になりますが、今まで夫婦二人三脚でやってきて、自分が死んだ後、支えてくれた配偶者が安心して老後を暮らせるように、感謝をこめて、遺言に「配偶者居住権」の文字を書いてみてもいいかもしれません。